外国人労働者への教育のポイント3つ
外国人労働者を雇い入れたいと思ったときに不安に思うことに教育やコミュニケーションの難しさがあると思います。
言語の壁や文化の違いなどもあり、なかなかスムーズに進まないこともありますが、教育不足やコミュニケーション不足は労働災害に繋がる恐れもあり大変危険です。
今回は外国人労働者への教育やコミュニケーションのポイントを見ていきましょう。
教育不備は労災に繋がる
神奈川県の横浜南労働基準監督署は、外国人労働者の労働災害が増えているとして、事業所に対し雇用管理の改善を呼びかけています。
特に製造業の労災件数が増えており、横浜南労働基準監督署管轄では9月末時点で前年比70.6%増加しています。
中には外国人労働者が作業に伴う危険性を理解しないまま作業しているケースも見受けられ、会社による教育の重要さを物語っています。
「外国人労働者へもじゅうぶんな教育を」と分かってはいても、言葉の壁やマナー(文化)の違いもありなかなか難しいこともあります。
特に初めて外国人労働者を雇う場合、外国人労働者を雇い始めて間もない場合は会社としても不慣れなことが多いでしょう。
しかし、コミュニケーション不足や伝達不足、理解不足は重大な労働災害に繋がる可能性もあります。
一歩ずつでも解消していけるよう進めていきましょう。
外国人労働者への教育のポイント3つ
会社の選考を通り採用された外国人労働者は優秀なはずです。
少しでも早く仕事に慣れて、安全に活躍いただくために次の3つを取り入れることをおすすめします。
最初から全てを取り入れるのは難しいかもしれませんが、1つでも取り入れられると変化があると思います。
やさしい日本語を使う
日本語は難しい言語です。やや遠回しな言葉もあります。
例えば、「~であるはずがない」だと、日本語に慣れていない人は「あるの?ないの?どっちなの?」と理解できない可能性がありますし、「ずきずきする」「ちくちくする」などのオノマトペの豊富さも日本特有のものですので極力使わないようにしましょう。
以下にやさしい日本語の例を載せます。
- 難しい言葉を使わない
就業規則 ⇒ 会社が決めた、働くときの細かいルール - 和製英語を使わない
コンセント ⇒ 米国ではoutlet、英国ではsocke - オノマトペを使わない
お腹がちくちくする ⇒ お腹が痛い - 二重否定を使わない
不可能ではない ⇒ できる - 尊敬語や謙譲語を使わない
いらっしゃいます ⇒ 来ます
参ります ⇒ 行きます - Yes/Noで答えられる質問にする
日本に来たのはいつですか? ⇒ 日本に来たのは○月ですか? - 回りくどい言い方をしない
結構です/ご遠慮ください ⇒ やめてください - 複数の意味で捉えられる言葉を使わない
できたら ⇒ できる(可能)なら/この仕事が終わったら
すみません ⇒ ありがとう/ごめんなさい - 曖昧な言葉を使わない
多分(おそらく)合っている ⇒ 合っている
ちょっとできない ⇒ できない
また、なるべく短く切って話す、ゆっくり話すなどの配慮も大切です。
メンター制度を取り入れる
メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ) に対して行う人材育成制度です。
メンターはただ単に仕事を教えるだけでなく、キャリア形成や悩みの解消など精神面もサポートしていきます。
一般的には利害関係のない他部署の先輩が務めることが多いです。
他部署の先輩がメンターを務める場合は、直接仕事を教えることは難しいかもしれませんが、悩みを聴きながら仕事の覚え方やコツなどを自身の経験を交えながら伝えることはできます。
メンター制度を取り入れるメリットは次の通りです。
- 相談する人が明確であり、戸惑いや不安がなくなる
- 1対1なので、一貫したサポートができる
- 信頼関係を構築しやすく定着率が高まる
- 悩みを抱え込まずにすむ
- 社内コミュニケーションが活性化される
- 企業風土の継承ができる など
マニュアルは多言語化する
日本語はひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字が交わり、非常に難しい言語と言われています。
そこに日本独自の「和製英語」も加わると更にややこしいです。
多少日本語に慣れているとしても十分に理解できる、使いこなすには相当の時間と経験が必要です。
仕事上の守るべきルールや手順をしっかりと理解してもらうためにもマニュアルなどをできるかぎり多言語化しましょう。
いきなり多言語化するのが難しい場合は、英語のものを優先的に作成しましょう。
また、日本語以外のマニュアルなどを作成するのが難しい場合は図(絵)を用いるなどして視覚的に分かりやすくするのも一つの方法です。
外国人労働者とのコミュニケーションのポイント
自分(日本人)の価値観を知る
外国人労働者と日本人は育ってきた国が違います。
国が違えば文化や慣習も違います。
文化や慣習が違えば価値観も違います。
私たちが他人に違和感を覚えるときは、価値観の相違が原因であることがあります。
そして、価値観が違う人のことを「嫌な人」「言っても分からない人」と認識してイライラしてしまう傾向にあります。
でも実際は、その人自身が嫌な人なのではなく、ただ価値観が合わないだけなのです。
コミュニケーションの話になると、「相手の価値観を否定しない」「相手の価値観を受け入れる」というワードが出てきますが、相手の価値観を受け入れるためにはまず自分の価値観を知ることが大切です。
例えば、日本人は他国からは「マナーが良くサービス精神が高い」という評価を得ていますが、それは外国では珍しいからこそ評価されているので決して当たり前なことではないのです。
自分(日本人)の価値感を認識していれば、相手にイライラすることがあっても、「私はAという価値観を持っている。相手はBという価値観を持っているから合わないのだ。」と冷静になることができます。
価値観は正しい正しくないというものではないので、相手の価値観を認めても自分の価値観を否定することにはならず、「確かにBという考えもあるよなぁ。(私は違うけど)」と素直に思える可能性が高まります。
相手の文化や価値観を尊重する
価値観は人それぞれ違いますが、国による傾向はあります。
例えば、日本は「空気を読む」など言葉以外の文脈や状況を重視するハイコンテクスト文化です。
一方でアメリカなどの欧米はきちんと言葉で伝えることを大切にするローコンテクスト文化です。
相手の文化を考えずに自身の価値観だけで相手を判断してしまうとお互いに傷ついてしまう可能性があります。
自身の価値観を認識した後は、相手の価値観や文化を理解し、尊重することで良好な関係が築けます。
外国人雇用に関する相談を受け付けています!
外国人雇用をするには、外国人労働者に日本語や日本の文化に慣れてもらうことも必要ですが、周りからの歩み寄りも必要不可欠です。
安全のため、そして能力を精一杯発揮していただくためにも、最初の教育は丁寧に行いましょう。
外国人雇用やビザ(在留資格)、資格外活動許可のことで迷った際はぜひ専門家にご相談ください。
外国人雇用は人材不足の解消や社内のグローバル化への対応、社内に新しい風を吹かせることができるなどメリットがある一方、手続きの煩雑さや労務管理の面倒、文化や習慣の違いによるトラブルなどの懸念点も無視できないのではないでしょうか。
行政書士オフィスウィングでは、就労ビザの取得や期間更新から労務管理の相談まで外国人雇用について幅広く対応しております。併設しております社会保険労務士オフィスウィングでは社会保険の手続きや就業規則の作成・見直しも対応しておりますので、お気軽にご相談ください!