外国人と業務委託契約をする際に必要なビザとは

昨今は多様な働き方が注目されていますが、その最たるものが「業務委託契約」ではないでしょうか。
中には「優秀な外国人と業務委託契約をしたい」と考えている会社もあるかもしれません。

今回は、業務委託契約を行う際に必要な就労ビザ(在留資格)についてみていきましょう。

※本来「ビザ(査証)」と「在留資格」は異なるものですが、一般的に使用される意味にあわせてこの記事では「就労できる在留資格」のことを「就労ビザ(在留資格)」と表記します。

雇用契約と業務委託契約の違いや、業務委託契約を締結しているが実態が雇用契約だったときのリスクについては社会保険労務士オフィスウィングのホームぺージに記載しています。

目次

業務委託に特化した就労ビザ(在留資格)はない

結論からいうと、業務委託専用のビザは存在しません。
業務委託契約であっても、雇用契約するときと同じように就労内容に応じたビザ(在留資格)を取得します。
しかし、業務委託契約は一般的に業務の遂行や成果物を納品することが契約の目的であり、目的が完了したらそこで任務(契約)終了です。
そのため、雇用契約と比較すると継続性や安定性が認められにくい傾向があり、雇用契約と比較するとビザ(在留資格)取得は難しいと考えておいた方が無難です。

基本的には「技術・人文知識・国際業務」ビザ(在留資格)

事務職やSEなどの家でパソコンを用いて行う仕事であれば、基本的には「技術・人文知識・国際業務」ビザ(在留資格)に該当することが多いです。
就労ビザ(在留資格)取得には「継続して安定的な収入を得られる」ことが必要です。
そのため、業務委託契約が単発だったり、契約期間が短い(1ヶ月から3ヶ月程)場合は厳しく判断されてしまう可能性があります。
この場合は、会社として継続して依頼する意思があることを入管に書面で伝えましょう。
また、複数の会社業務委託契約している場合は契約金額が一番大きい会社の情報(決算書類や業務委託契約書を提出する)で手続きすることが一般的です。

外国人との業務委託契約の際の注意点

外国人と業務委託契約を結ぶ場合、以下の点に注意しましょう。

【企業側】雇用契約と業務委託契約の違いをきちんと説明する

会社は業務委託契約だと思っていても、相手は雇用契約だと思っていることがあります。
雇用契約と業務委託契約の違いをきちんと説明し双方納得の上契約しましょう。

【本人側】きちんと確定申告して税金を納めること

業務委託は個人事業主なので、本人が自分で確定申告を行う必要があります。
滞納なくきちんと税金を納めているかはビザ(在留期間)更新の際の重要な審査ポイントになっています。
また、確定申告が終わり、所得税の納税も終わり、落ち着いた頃(6月)には市区町村から住民税の納付書が送られてきます。
住民税も必ず納付するよう伝えた方が安心です。
絶対に申告漏れ、納税漏れがないように注意しましょう。

【本人側】国民健康保険・国民年金も納めること

業務委託は個人事業主なので、会社の社会保険ではなく、自分で国民健康保険・国民年金に加入します。
きちんと国民健康保険・国民年金を納付しているかもビザ(在留資格)更新の際の審査のポイントになっています。
国民健康保険・国民年金は自分で加入手続きをしないといけません。
就労ビザ(在留資格)取得の手続き前にも必ず加入手続きは済んでいるか、きちんと納付しているかの確認をしましょう。

業務委託契約は労働者性がないことが大前提

原則として、業務委託は個人事業主扱いなので、労働基準法が適用されませんし、社会保険や労働保険(労災保険・雇用保険)への加入義務もありません。
それを逆手にとって、実態としては雇用契約なのに業務委託として契約する事例が後を絶ちません。
争いになり後から労働者性が認められると大きな時間的・金銭的な負担も出てくる可能性がありますし、入管の知るところとなると、「悪質な事業所である」と認識され今後の外国人採用に影響が出てしまう可能性も否定できません。
以下の要件に当てはまっていると、「労働者性がある」と解される可能性があります。
業務委託契約を行う際には十分に注意をしましょう。
※労働者性は個別具体的に総合的に判断されます。
そのため以下に1つでも当てはまったら即労働者性があるというものではありません。

  • 仕事の細かい進め方を指示しているなど指揮命令をしている
    ⇒マニュアルに沿ったやり方を強要する、こまめな進捗状況の報告を求めるなど
  • 勤務時間や場所が拘束される
    ⇒毎週月曜から金曜の9:00~18:00に本社に出勤することを求めるなど
  • 仕事の依頼に対する拒否権が受託者にない
    ⇒頼まれた仕事は絶対に引き受けないといけない
  • 報酬が労務の対象として支払われている
    ⇒仕事の成果に関わらず時給や日給など働いた時間に応じて支払われているなど
  • 報酬額が一般的な従業員と同じである
    ⇒従業員用の等級表に応じた金額になっているなど
  • 使用機材を会社負担で用意している
    ⇒パソコンやシステムを貸与しているなど
  • 一部でも就業規則が適用されている
    ⇒働かなかった日や時間に応じて控除されているなど(欠勤控除・遅刻早退控除) など

適正な業務委託契約を締結すること

「業務委託だと残業代を支払わなくても良い」
「業務委託だと社会保険に加入させなくても良い」
「業務委託だと簡単にクビにできる」
という言葉を聞くことがあります。
決してウソではないのですが、実態が雇用契約であれば問題です。
制度をきちんと理解して適切な契約を結ぶようにしましょう。

雇用契約と業務委託契約の違いや、業務委託契約を締結しているが実態が雇用契約だったときのリスクについては社会保険労務士オフィスウィングのホームぺージに記載しています。

外国人雇用に関する相談を受け付けています!

業務委託契約であっても雇用契約と同様に就労ビザ(在留資格)を取得することが可能です。
しかし、雇用契約と比較すると継続性・安定性に欠けることから審査も厳しくなる傾向にあります。
迷った際、困った際は専門家に相談することをおすすめします。

外国人雇用は人材不足の解消や社内のグローバル化への対応、社内に新しい風を吹かせることができるなどメリットがある一方、手続きの煩雑さや労務管理の面倒、文化や習慣の違いによるトラブルなどの懸念点も無視できないのではないでしょうか。
行政書士オフィスウィングでは、就労ビザの取得や期間更新から労務管理の相談まで外国人雇用について幅広く対応しております。併設しております社会保険労務士オフィスウィングでは社会保険の手続きや就業規則の作成・見直しも対応しておりますので、お気軽にご相談ください!

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この記事を書いた人

板羽愛由実のアバター 板羽愛由実 行政書士・社労士・産業カウンセラー

・東京都杉並区生まれ神奈川県川崎市育ち
・行政書士 兼 社労士 兼 産業カウンセラー

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