外国人雇用ができる在留資格(就労ビザ)とは

昨今は少子高齢化の影響もあり、外国人労働者への関心が高まってきています。

厚生労働省の発表によると、令和5年10月末時点で外国人労働者数は2,048,675人、前年比で225,950人増加しており、届出が義務化された平成19年以降過去最高を記録しました。しかし、外国人は無条件で雇用できるわけではありません。原則として、外国人が日本で働くためには就労ビザが必要です。

では、外国人労働者が日本で働くために必要なビザについてみてきましょう。

目次

ビザと在留資格の違い

「ビザ」と「在留資格」は混同されがちですが実は全く異なるものです。

 一般的に「ビザ」と呼ばれているものは「在留資格」の事を指すことが多いです。

簡単に言うと、「ビザ(査証)」は日本に入国するまでに必要なもの、「在留資格」は日本に入国後に必要なものです。

ビザ(査証)とは

「ビザ」とは「査証」のことで、海外の日本公館で発給される外国人が日本に入国しても差支えがないことを入国管理官に示す証書です。入国を保証するものではありませんが、入国許可を得るにあたり必要な書類です。

在留資格とは

「在留資格」とは外国人が日本に滞在するために必要な資格です。日本で行う活動によって取得する在留資格も異なります。在留資格には在留期限(5年・3年・1年・3ヶ月)があり、この期限を過ぎても日本に滞在したい場合は在留期間更新許可申請を行い、許可を得る必要があります。

身分系の在留資格は無制限で就労可能

外国人が日本で働くには原則として就労可能な在留資格(就労ビザ)が必要ですが、身分系の在留資格は違法でない限りどのような仕事にも就くことができます。「身分系の在留資格」とは、職業などの活動内容ではなく、日本人の配偶者であるなどの身分に応じて与えられる在留資格のことを指します。

身分系の在留資格は以下の通りです。

  • 日本人の配偶者等
  • 永住者
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

身分系の在留資格の場合は、日本人や永住者の家族なのに日本で自由な経済活動ができないのは合理的でないので、日本人と同じように違法でない限りどんな仕事でも就くことができるのです。なお、特別永住者も就労制限がありませんが、在留カードの交付もなく(代わりに特別永住者証明書が交付される)働く上では外国人として扱いません。

就労系の在留資格は認められた範囲内で就労可能

就労系の在留資格は活動内容にあわせて取得します。つまり、自身が持っている在留資格で認められている活動以外は原則として行うことができません。そのため企業内で異動があるときは注意が必要です。ただし、例外として、資格外活動許可を得た場合はその範囲内で別の活動を行うことができます。

就労系の在留資格は以下の通りです。

外交外国政府の大使、総領事など(家族を含む)
公用外国政府の大使館、領事館の職員など
教授大学教授など
芸術作曲家、画家など
宗教僧侶、宣教師など
報道報道記者、報道カメラマンなど
経営・管理代表取締役、工場長など
法律・会計業務弁護士、公認会計士など
医療医師、看護師など
研究研究者など
教育小中高等学校、特別支援学校の教員など
技術・人文知識・国際業務人事、総務、広報など(一般的な会社員)
企業内転勤海外からの転勤者で技術・人文知識・国際業務の活動内容に該当する外国人労働者
介護介護福祉士
興行サーカス団員、モデル、芸能人など
技能外国料理のコック、外国建築大工など
高度専門職高度で専門的な能力を持った外国人労働者
技能実習技能実習生
特定技能特定産業分野で相当程度の知識と経験を有する外国人労働者
特定活動の一部ワーキングホリデー、インターンシップ生など

原則として就労できない在留資格もある

身分系の在留資格でもなく、就労を目的とした在留資格でもない場合は原則として就労することができません。ただし、例外として、資格外活動許可を得た場合はその範囲内で別の活動を行うことができます。

原則として就労できない在留資格は以下の通りです。

  • 留学
  • 家族滞在
  • 研修
  • 文化活動
  • 短期滞在
  • 特定活動の一部

資格外活動許可とは

資格外活動許可とは在留資格で認められた活動以外の活動を行う場合に必要な許可です。

 例えば以下のような状況が考えられます。

 ・留学ビザ(在留資格)を持っている人がアルバイトをしたい

 ・技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)を持っている人が高校で非常勤語学教師としても働く場合【語学教師として働くには教育ビザ(在留資格)が必要】

資格外活動許可を得て働く場合は週28時間以内という制限があります。(※)この週28時間以内はどの曜日から起算しても週28時間以内であることが求められるので、シフト管理には注意が必要です。ちょうど週28時間になるシフトを組む場合は、どこかで残業をしたら別日にその分の労働時間を減らさないといけません。もし週28時間を超えて働いてしまった場合は、外国人労働者本人は不法就労罪、雇用している企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。不法就労助長罪は企業だけでなく、人事担当者や管理職など個人としても問われる可能性があります。罰則も3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方と非常に重たいので労務管理には細心の注意を払いましょう。

(※)学生の場合は学校の長期休暇中は1日8時間、1週40時間まで就労可能

≪NG例≫

合計
5時間6時間4時間5時間8時間28時間
合計
8時間6時間8時間4時間26時間

1週目の合計は28時間、2週目の合計は26時間になり、28時間を超えないのでセーフ。しかし、月曜日と火曜日を起算日にすると、31時間になり、28時間を超えてしまうのでNGです。同様に水曜日起算日だと39時間、木曜日起算だと35時間、金曜日・土曜日起算だと34時間になり、28時間を超えてしまうのでNGです。

≪OK例≫

5時間5時間5時間5時間
8時間5時間5時間6時間

日曜日を起算日にすると20時間(2週目は24時間)、月曜日・火曜日・水曜日・金曜日・土曜日を起算日にすると23時間、木曜日を起算日にすると28時間になり、週28時間を超えないのでOKです。

外国人雇用の際は必ず在留カードを確認しましょう

就労可能なビザを持っていなかったり、在留期間を超えて働いてしまうと、外国人労働者本人も企業も法違反となり厳しい罰を受ける可能性があります。外国人雇用の際は必ず在留カードの提示を求め、就労可能な在留資格を持っているか、在留期限内であるかの確認が必要です。ただし、選考の過程で在留カードの提示を求めることは差別防止の観点から望ましくないとされています。在留カードは内定後に提示を求め、適切な在留資格を持っていない場合は在留資格変更許可申請を行います。内定通知書に「適切な在留をしていると確認できない場合および適切な在留資格に変更を希望しない場合または適切な在留資格を取得できない場合は内定取り消しになる」旨を記載しておくと良いでしょう。

外国人雇用は人材不足の解消や社内のグローバル化への対応、社内に新しい風を吹かせることができるなどメリットがある一方、手続きの煩雑さや労務管理の面倒、文化や習慣の違いによるトラブルなどの懸念点も無視できないのではないでしょうか。

行政書士オフィスウィングでは、就労ビザの取得や期間更新から労務管理の相談まで外国人雇用について幅広く対応しております。併設しております社会保険労務士オフィスウィングでは社会保険の手続きや就業規則の作成・見直しも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

板羽愛由実のアバター 板羽愛由実 行政書士・社労士・産業カウンセラー

・東京都杉並区生まれ神奈川県川崎市育ち
・行政書士 兼 社労士 兼 産業カウンセラー

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