
外国人労働者が転職してきた際の手続き~社会保険など編~

外国人雇用を検討した際に気になることの一つに「日本人労働者と違う手続きがあるのか」があげられると思います。
今回は外国人労働者が転職してきた際の社保手続きなどについてみていきましょう。
入管手続きについては以下の記事をご覧ください。

労災保険
外国人労働者も日本人労働者と同様に労災保険の対象です。
しかし、入社後すぐに行う手続きはありません。
毎年6月から7月に行う労働保険の年度更新手続きの際に、外国人労働者の賃金額も含めて申告します。
雇用保険
雇用保険は加入対象でなかったとしても提出する書類がありますので注意が必要です。
雇用保険被保険者資格取得届の提出
外国人労働者も日本人労働者と同じ以下の条件を満たすと雇用保険へ加入義務がありますので、翌月10日までにハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
- 1日以上引き続き雇用されることが見込まれること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 学生でないこと(例外あり)
学生の例外は以下です。
- 休学中の学生
- 夜間学校・通信制の学校の学生
- 卒業見込みがあり、卒業後の就職が決まっている学生
- 社会人学生
雇用保険は「労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うこと」を目的とした制度ですので、継続して主たる身分が学生の場合は適用対象外になります。
提出してもらう書類は以下の通りです。
- 雇用保険被保険者番号が分かる書類(雇用保険被保険者資格取得確認通知書など)
- マイナンバーが分かる書類(マイナンバーカードの写しなど)
- 在留カードの写し(在留カード番号、在留資格、在留期間の届出が必要)
雇用保険被保険者番号が分かる書類がない場合は、雇用保険被保険者資格取得届の備考欄に直近で雇用保険に加入していた会社名を記載すれば、ハローワークで照合してもらえます。
外国人雇用状況届出書の提出(雇用保険に加入しない場合)
雇用保険に加入対象外の外国人労働者については「外国人雇用状況届出書」をハローワークに提出します。
在留資格や在留期間など在留カードに記載のある情報を届け出ます。
こちらは外国人労働者ならではの届出なので忘れないようにしましょう。
※雇用保険に加入する場合、外国人雇用状況届出書は必要ないです。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
社会保険は基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていない場合は、追加で提出する書類がありますので、注意が必要です。
被保険者資格取得届
外国人労働者も日本人労働者と同じ以下の条件を満たすと雇用保険へ加入義務がありますので、取得日から5日以内に年金事務所(広域事務センター)に「被保険者資格取得届」を提出します。健康保険組合に加入している企業の場合は、健康保険の被保険者資格届は健康保険組合に、厚生年金の被保険者資格取得届は年金事務所(広域事務センター)に提出します。
企業で社会保険に加入している人が51人以上いる場合の要件
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 月額報酬が88,000円以上であること(通勤手当は除く)
- 学生でないこと
- 2か月を超える雇用の見込みがあること
会社で社会保険に加入している人が50人未満の場合の要件
- 週の所定労働時間が正社員の4分の3以上あること(学生であっても加入義務あり)
51人以上の会社であっても、正社員の4分の3以上の所定労働時間の場合は学生であっても加入義務がありますので注意が必要です。
ここでいう4分の3以上は法定労働時間ではなく、会社の所定労働時間を基準にします。
「週30時間以上の労働時間があれば社会保険に加入する」と思われがちですが、所定労働時間が1日7時間(週35時間)の場合は週26時間15分以上の労働時間であれば社会保険の加入対象になります。
提出してもらう書類は以下の通りです。
- 基礎年金番号が分かる書類(年金手帳や基礎年金番号通知書など)(※)
- マイナンバーが分かる書類(マイナンバーカードの写しなど)
※資格取得届にマイナンバーを記載する際は基礎年金番号の記載は不要です
また、家族を社会保険の扶養に入れたい場合は、別途「被扶養者(異動)届」の提出が必要です。
扶養に入れる家族のマイナンバーも必要になります。
ローマ字氏名届(基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていない場合)
これまでに社会保険(厚生年金保険)の手続きの際にマイナンバーを提出したことがないなど、マイナンバーと基礎年金番号の情報が紐づいていない場合はあわせて「ローマ字氏名届」の提出も必要です。在留カードに記載のある通りの氏名を記載して年金事務所(広域事務センター)に提出します。
その他の手続き
特別徴収切替届出(依頼)書(住民税)
前年も日本で働いていた場合は、住民税の納税義務がある可能性があります。
前職で特別徴収をしていた場合、転職後は普通徴収になっている可能性がありますが、仮に税金の滞納が生じてしまうと、次の在留期間更新許可申請の際に不許可になってしまう可能性も否定できません。
普通徴収は忘れてしまいがちですので、滞納が生じないようにするためにも、特別徴収に切り替えた方が安心です。外国人労働者に住民税の納税があるか確認し、普通徴収であれば、納税市区町村に「特別徴収切替届出(依頼)書」を提出します。
なお、外国人労働者本人から特別徴収継続の「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の提出があった際は「新しい勤務先」の欄に自社の情報を記載して納税市区町村に提出します。
中長期在留者の受入れに関する届出
以下のいずれかの要件を満たす場合は、14日以内に出入国在留管理庁長官に対し「中長期在留者の受入れに関する届出書」を提出します。
ただし、外国人雇用状況の届出が義務付けられている機関は除きます。
- 「教授」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」の在留資格を持つ中長期在留者(日本に3ヶ月以上滞在する在留資格を有し、かつ「短期滞在」や「外交」「公用」の在留資格を有しない外国人)を雇用した場合
- 「研修」の在留資格を有する中長期在留者を受け入れている機関は、その中長期在留者の受入れを開始(雇用・役員就任等)又は終了(解雇・退職等)した場合
- 「留学」の在留資格をもって在留する留学生を受け入れている教育機関は、留学生の受入れを開始(入学・編入等)したとき又は終了(卒業・退学等)した場合
【参考】https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri10_00017.html(出入国在留管理庁ホームページ)
留学の在留資格を有する中長期在留者の受入れ状況に関する届出
「留学」の在留資格をもって在留する留学生を受け入れている教育機関は、毎年5月1日と11月1日における留学生の受入れの状況について、それぞれ14日以内に提出する必要があります。
外国人雇用や就労ビザに関する相談を受け付けています!
外国人労働者の社内手続きは日本人と異なるところもあり、抜け漏れがないように注意が必要です。
まずはどんな手続きが必要なのか把握するところから始めましょう。
また、社会保険などの手続きは手がかかると感じるかもしれません。
その場合は専門家(社会保険労務士)に委託することも一つの方法です。
外国人雇用は人材不足の解消や社内のグローバル化への対応、社内に新しい風を吹かせることができるなどメリットがある一方、手続きの煩雑さや労務管理の面倒、文化や習慣の違いによるトラブルなどの懸念点も無視できないのではないでしょうか。
行政書士オフィスウィングでは、就労ビザの取得や期間更新から労務管理の相談まで外国人雇用について幅広く対応しております。併設しております社会保険労務士オフィスウィングでは社会保険の手続きや就業規則の作成・見直しも対応しておりますので、お気軽にご相談ください!
