
外国人雇用のトラブルを防ぐ!ハラスメント対策のポイントと事例

近年、日本の労働市場において外国人労働者の数が増加し、企業のグローバル化が進んでいます。
しかし、その一方で、文化や言語の違いを背景に、職場でのハラスメントが問題となるケースも増えています。外国人雇用を成功させるためには、ハラスメントを未然に防ぎ、働きやすい環境を整えることが重要です。
本記事では、外国人雇用に関するハラスメントの実態と、企業が取るべき対策を具体的な事例とともに解説します。
外国人雇用におけるハラスメントの現状
外国人労働者の増加と職場での課題
厚生労働省の統計によると、2023年時点で日本の外国人労働者数は約200万人を超えました。
特に、技能実習生や特定技能制度のもとで来日する労働者が増加しており、製造業・建設業・介護業・飲食業などでの雇用が拡大しています。
しかし、日本人と外国人の間には文化・言語・価値観の違いがあり、適切な対応をしなければハラスメントにつながる可能性があります。ハラスメントが発生すると、労働環境が悪化するだけでなく、転職サイトへの口コミがなされるなど企業の評判を損なう可能性があります。
外国人労働者が受けるハラスメントの種類
以下のようなハラスメントが特に問題視されています。
種類 | 具体的な例 |
パワーハラスメント | 能力に関係なく低評価を受ける、日本人より厳しい指導をされる |
セクシュアルハラスメント | 言葉が分からないことを利用した不適切な発言、過度な接触 |
モラルハラスメント | 「日本のルールに従えないなら帰れ」といった差別的発言 |
経済的ハラスメント | 過重労働を強いられる、契約外の業務を押し付けられる |
このようなハラスメントを放置すると、外国人労働者が精神的・肉体的に追い詰められ、離職や訴訟につながる恐れがあります。
外国人労働者のハラスメントを防ぐためのポイント
企業がハラスメントを未然に防ぐためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
① ハラスメント防止のための社内ルールを整備する
・ハラスメント禁止のポリシーを明文化し、社内に周知する
・社内においてのハラスメントの定義を明確にする
・国籍問わず全労働者に向けた研修を実施する
② 相談窓口を設置し、適切に対応する
・外国人労働者が相談しやすい環境を整える(可能な限り母国語対応が望ましい)
・匿名で相談できる仕組みを用意する
③ 言語・文化の違いを考慮した職場環境を作る
・可能な限り多言語のマニュアルや掲示物を用意し、業務理解をサポートする
・通訳や翻訳アプリを活用し、スムーズなコミュニケーションを促進する
④ハラスメント行為者への厳正な対応を行う
・ハラスメントが発覚した場合は迅速に調査し、適切な処分を実施する
・再発防止のために定期的な研修を行う
しかしながら、「受けた本人はハラスメントだと感じたが、実態としてはハラスメントではない」こともあります。
調査や聞き取りを行う際は「ハラスメントがあった」と決めつけずに事実を求める姿勢が重要です。
日本の文化や自身の価値観の明確化も大事
無意識のハラスメントが起きる原因の一つに「文化や価値観の違い」が考えられます。
自身が育ってきた文化、自身が持っている価値観と異なるものに触れたときに違和感を覚え、「自分には理解できない行動をとる人」などという受け取り方になってしまうのです。
その結果、当たりが強くなってしまったり、集団での無視や陰口にまで発展することもあります。
この「文化や価値観の違い」に起因するハラスメントを予防するためには、そもそもの自身が育ってきた文化や自身が持っている価値観を明確に把握することが大切です。
文化や価値観の違いで違和感を覚えるのであれば、そもそもの自身の文化や価値観を知らないといけません。
例えば、日本では「空気を読む」という文化があります。
言葉だけでなく、文脈や非言語的な要素も大事にするハイコンテクスト文化です。
中には空気を読むのが苦手な人もいるかもしれませんが、「空気を読む」という概念はあるはずです。
しかしながら、言葉でしっかり伝えることを大事にするローコンテクスト文化で育ってきた外国人は「空気を読む」という概念すら存在しない可能性があります。
そのため、空気を読むことを大事にする人からすれば、「なんて空気の読めない人なんだ」と怒りがこみあげてきてしまう可能性があるのです。
ここで、「私は空気を読むという文化で育ってきた」という明確な自覚があると、「空気を読むという文化を持たない人だから違和感を覚えるのね」と冷静に相手を受け止めることができるようになります。
ハラスメント防止には、「相手を知ること」も大事ですが、まず「自分を知ること」が大事と言えます。
ハラスメント問題が起こった際の企業の対応策
実際にハラスメント問題が起こった際の対応をみていきましょう。
1.事実確認
まず、状況を正確に把握するために、関係者からヒアリングを行います。
✅ 本人の意見を聴取(通訳を介する場合も考慮)
✅ 行為者の意見を聴収(指導の適正性や意識の確認など)
✅ 他の同僚の証言を集める(指導の一貫性や過去の事例の確認など)
※ハラスメント問題が起こった際は「加害者」ではなく「行為者」という表現を使います。
ハラスメントは受け止め方によっても変わり、「受けた本人がハラスメントだと思っていても実態は違っていた」こともあります。
ハラスメント行為があったと決めつけずに公平に意見を聴取することが求められます。
2.ハラスメント該当性の判断
主に以下の点を確認します。
📌 指導の範囲を超えて人格否定や差別的言動があったか
📌 同様の行為が過去にも繰り返されていないか
📌 業務上の適切な指導と比較して著しく不公平な扱いがあったか
📌 企業のハラスメントポリシーに違反していないか
3.会社としての対応
事実確認後、ハラスメントに該当する場合、以下の対応を取ります。
(1)行為者への処分・指導
- 厳重注意や懲戒処分などの社内規定に基づいた処分
- 研修の実施(多文化理解・適正な指導方法の研修)
- 被害者への謝罪と再発防止策の提示
(2)職場環境の改善
- 外国人労働者向け相談窓口の設置(通訳対応可能な窓口が望ましい)
- 全従業員向けハラスメント防止研修の実施
- 従業員へのアンケート調査(定期的な職場環境のチェック)
(3)被害者へのフォロー
- 心のケア(メンタルサポート・カウンセリング)
- 適切な業務環境の確保(配置転換の検討)
- 今後のハラスメント防止策の説明と再発防止の確約
4.再発防止策の実施
🔹 経営陣のコミットメント(差別禁止・多文化共生の推進)
🔹 外国人労働者との円滑なコミュニケーション施策(言語・文化研修)
🔹 第三者機関との連携(労働組合・NPOなど)
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外国人労働者が安心して働ける職場環境を作ることは、企業の成長にもつながります。ハラスメント問題を未然に防ぐためには、以下の取り組みが重要です。
✅ ハラスメント防止の社内ルールを整備
✅ 相談窓口を設置し、早期対応できる体制を作る
✅ 言語・文化の違いを考慮した職場環境を構築
✅ 加害者への厳正な対応を徹底し、再発防止策を講じる
企業が積極的にハラスメント対策に取り組むことで、外国人労働者の定着率が向上し、多様性を活かした強い組織を作ることができます。今後のグローバル化を見据え、適切な対応を進めていきましょう。
外国人雇用は人材不足の解消や社内のグローバル化への対応、社内に新しい風を吹かせることができるなどメリットがある一方、手続きの煩雑さや労務管理の面倒、文化や習慣の違いによるトラブルなどの懸念点も無視できないのではないでしょうか。
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