
就労ビザで外国人を雇用する際の注意点|トラブルを防ぐ方法

近年、少子高齢化による労働力不足を背景に、多くの企業が外国人材の雇用を検討しています。その際に必須となるのが就労ビザです。
しかし、就労ビザを活用して外国人を雇用するには、適切な手続きや制度の理解が欠かせません。
不十分な知識や対応ミスが原因で、トラブルや不法就労に繋がるリスクも否定できません。
本記事では、就労ビザで外国人を雇用する際の注意点を解説します。
就労ビザとは?
「就労ビザ」という言い方が一般的になっていますが、正しくは「在留資格」です。
外国人が日本で働くためには、原則として就労可能な「在留資格」を得る必要があります。
「在留資格」は複数あるので、業務内容に応じて適切な在留資格を得る必要があります。
なお、「ビザ」は渡航先の国が外国籍の渡航者に対して発行する入国許可証のようなものであり、本来は「在留資格」とは別物です。
本記事では一般的となっている表現にあわせ、「就労できる在留資格」のことを「就労ビザ(在留資格)」と表記します。
◆主な就労ビザ
- 技術・人文知識・国際業務
例:エンジニア、通訳、営業など - 特定技能
例: 外食業、介護、建設業など16分野 - 高度専門職
高度なスキルや知識を持つ人材向け - 技能
例: 外国料理のシェフなど
それぞれの就労ビザ(在留資格)で認められた業務内容以外の業務に従事させると、外国人労働者本人は不法就労罪に、企業や人事担当者は不法就労助長罪に問われる可能性があります。



外国人労働者の雇用時の注意点
就労ビザ(在留資格)で外国人を雇用する際の注意点です。
きちんと在留カードを確認すること
内定のタイミングで必ず在留カードで
・在留資格が雇用予定の業務内容に合っているか
・在留期限
は必ず確認します。
また、在留カードはコピーの提出ではなく、必ず原本の提示を受け、会社でコピーを取ります。
なお、採用選考の段階で在留カードの提示を求めるのは、差別防止の観点から望ましくないとされています。
必ず、内定のタイミングで提示を求めるようにしましょう。

内定通知書と雇用契約書には内定取消の条件や雇用開始の条件を記載しておくこと
内定通知書を出す段階ではまだ在留カードを確認していません。
もし、適切な就労ビザ(在留資格)を持っていない場合は、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
しかし、「在留資格変更許可申請」が必ず許可されるとも限りません。
また、在留カードの提示を拒まれることや、提示された在留カードの真偽が疑わしい、在留期限が切れていた、という可能性も考えられます。
そうなると雇用できないので、適切な在留資格を得なければ働けない旨を内定通知書と雇用契約書に記載しておいた方が安心です。
◆内定通知書の記載例
「ただし、適切な在留をしていると確認できない場合及び適切な在留資格に変更を希望しない場合又は適切な在留資格への変更が許可されなかった場合は内定取消とする。」
◆雇用契約書への記載例
「本契約は雇用者が就労可能な在留資格を取得した場合に限り、有効となる。」
雇用契約内容をしっかりと説明すること
外国人労働者との契約条件を曖昧にすると、後々のトラブルにつながる恐れがあります。
特に給与に関しては、額面の金額をそのままもらえると思っていることも少なくありません。
日本で初めて働く場合は、社会保険制度や雇用保険制度、源泉徴収制度になじみのない可能性もあります。
手取りがいくらになるかもきちんと説明することが重要です。
また、固定残業制度も誤解されがちなポイントですので導入している場合は必ず説明しましょう。
日本語での説明が難しい場合は、母国語に翻訳した書類も渡すのもトラブル防止になります。

労働法規を遵守すること
外国人労働者も労働基準法をはじめとした労働法規の対象になります。
最低賃金や有給休暇の付与、残業代の支払いなど日本人労働者同様に法定労働条件を下回らないようにする必要があります。
また、要件を満たせば、社会保険や雇用保険も加入対象になります。
忘れずに手続きをしましょう。

在留カードの管理と更新手続きを忘れないこと
在留カードの提示を受けたら必ずコピーして保管します。
更新手続きは在留期限の3ヶ月前からできますので、早めに手続きしておくと安心です。
また、異動がある際は必ず異動先の業務内容と在留資格で認められている業務内容が合うかの確認を行いましょう。
相手の文化を否定しないこと
外国人労働者が職場環境に適応できるよう、文化の違いに配慮したサポートが求められます。
私たち日本人にとっては当たり前のことでも、外国人労働者にとってはその概念すらない場合もあります。
例えば、日本は「空気を読む」「察する」「あまりはっきりとは言わない」ハイコンテクスト文化と言われています。
しかし、海外の中には、「言葉による表現を重視する」「直接的な表現が良いとされる」「個人主義である」ローコンテクスト文化のところもあります。
空気を読まない人にイライラしたり、報・連・相がなく一人で進められて困ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、これは文化の違いの影響があり、どちらが正しい、間違っているというものではありません。
日本企業のやり方に慣れていただく必要はありますが、「空気を読まないなんてあり得ない」や「報・連・相なく進めるなんてダメ!!」と相手を否定するのではなく、相手の文化も理解し、日本の文化も理解していただくという姿勢が求められます。
外国人雇用において大きなトラブルを防ぐポイント
外国人雇用において、以下の対策を講じることでトラブルを未然に防ぐことができます。
適切なサポート体制を構築すること
外国人労働者が日本で安心して働けるよう、企業内にサポート体制を整えましょう。
≪例≫
・専任の担当者を配置する
・多言語対応のマニュアルや案内を準備する
また、普段の仕事を教わる先輩とは別に、職場の困りごとや私生活の困りごとなどを相談できる人をもうけるメンター制度を取り入れるのも効果的です。
「誰に聞いていいか分からない」や反対に「誰に聞いても良い」だと外国人労働者は迷ってしまうかもしれません。
「この人に聞けばOK!」というメンターをもうけることで効率よくサポートすることができます。
法令の最新情報をチェックすること
就労ビザ(在留資格)に関する法律やルールは変更される可能性があります。
最新情報をチェックし続けることが重要です。
≪例≫
・出入国在留管理庁の公式サイトを定期的に確認する
・行政書士などの専門家に相談する
トラブルは小さいうちに把握すること
多くの人が集まり仕事をする以上、全くトラブルを起こさない、というのは難しいかもしれません。
しかし、なるべく小さいうちに把握することで解決に向けて迅速に対応することができます。
問題が拡大する前に解決できるようにしましょう。
≪例≫
・定期的に面談を実施する
・行政書士、社会保険労務士などの専門家に相談する
外国人雇用や就労ビザに関する相談を受け付けています!
就労ビザ(在留資格)で外国人を雇用する際には、在留カード(在留資格)の確認や適切な雇用契約の締結、労働法規の遵守が欠かせません。また、文化や言語の違いに配慮し、生活面のサポートやコミュニケーションを取ることでトラブルを未然に防ぐことが期待できます。
外国人雇用は人材不足の解消や社内のグローバル化への対応、社内に新しい風を吹かせることができるなどメリットがある一方、手続きの煩雑さや労務管理の面倒、文化や習慣の違いによるトラブルなどの懸念点も無視できないのではないでしょうか。 行政書士オフィスウィングでは、就労ビザの取得や期間更新から労務管理の相談まで外国人雇用について幅広く対応しております。併設しております社会保険労務士オフィスウィングでは社会保険の手続きや就業規則の作成・見直しも対応しておりますので、お気軽にご相談ください!
